Industrial Internet、Industry 4.0と呼ばれる製造業の革新や、MaaS(Mobility as a Service)と呼ばれる新しい移動サービスなど、機械や建物、インフラ等から生み出される膨大なデータとAIとの連携によって今後、様々な技術革新やサービスが生み出されると期待されています。それと同時に、モノに取り付けられて各種データを計測・取得するIoTセンサの需要もますます高まってきます。一方、我々や身の回りの生活環境・自然環境まで目を向けると、我々自身の体から、細菌叢、農作物、家畜、水産物に至るまで、まだまだ未知、未収集の膨大な価値あるデータにあふれています。次世代のIoTセンサの対象として、これら微生物、植物、動物といった生体関連分野へも広がっていくことは疑いようもなく、既に皮膚に留置して血糖値の変化を捉えるパッチ型のセンサ1)や、皮膚に張り付けて汗のpHを測定するマイクロ流体システム2)などが一部の企業から商用化・発表されています。今後、例えばスポーツや作業時の疲労度を監視して最適な休憩タイミングを教えてくれるサービスや、街角に設置してローカルな花粉飛散量を監視するモニタリングポスト、公共空間で感染性微粒子の出現を監視するモニタなど、我々の生活に密着したIoT技術の出現が期待されるところです。ただし、そのようなIoTセンサを実現するためには、壊れやすく柔らかい生体物質と、硬質なセンサ体を繋ぐインターフェースをどのような構成や材料で製作するか、あるいは日常使いをするための耐久性をどのように確保していくか等々、技術的なハードルは高く、課題はまだまだ多く残されているのも事実かと思います。
今回は、1日目の最初に「バイオテクノロジーとMEMSの接点」という設定で、理研の小寺先生にバイオMEMSの歴史を概観いただくとともに、将来に向けての同技術の先進的事例などについてもご紹介いただく予定です。また東京大学の松永先生には、マイクロ流路において血管等の組織を再生させ、薬物の応答を評価するというバイオとナノ・マイクロの融合デバイスを利用した新しい評価技術について紹介いただく予定です。また同じく東京大学の高井まどか先生には、まさにセンサの感作面と微生物や生体由来物質などとの相互作用を制御するためのポリマー材料技術についてご講演をいただきます。2日目の午後には、特別レクチャーとして、多数の魚にセンサ付きのロガーを埋め込んで放流し、個体間の相互作用や、個体の回遊経路などのデータを収集するためのバイオロギングシステムに関する極めて興味深い話題を、北海道大学の宮下先生からご提供いただきます。現状では、MEMS技術の適用には至っていませんが、将来的には、より低侵襲で低損傷とするために小型軽量化に向かうこと、また現在の圧力や温度、照度といったログ項目から魚のバイタル情報なども含めた測定項目群へ多様化していくことは必至であり、その際にはMEMS技術は不可欠となるものと考えられます。以上の講演を通して、バイオとマイクロ・ナノ技術、MEMS技術との融合について、ぜひその可能性や展開に思いを巡らせ、将来の新しいビジネスチャンスを考える手がかりとしていただければと思います。
参考
1)Abbot HP: http://www.myfreestyle.jp/
2)LA ROCHE-POSAY HP: https://www.laroche-posay.us/learn-more.html
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